二〇〇五年三月下旬のある朝、阪急交通社の事務所にて
「うわ〜っ!」
「・・・?」
「うわ!すごーいっ!」
「朝っぱらからいったいどうしたの?」
「例のお客さま新聞への返信ファックスが続々届いていますよ!
ほら、こーんなに・・・これも、これも、ほらこれも全部そうですよ」
「どひゃ〜!」

 


みなさーん、お元気ですか?
先月創刊しました「阪急お客さま新聞--社員のないしょ話」
に対して多くのご感想、応援のお手紙をお寄せくださいましてほんとうにありがとうございます!
正直、ここまで多くのお返事をいだだけるなんて思ってもいませんでした。
「こんなわけのわからない手紙が突然届いてお客さまは変に思われないだろうか?」
「こんな1社員の個人的な思いなんかを綴って果たして受け入れられるだろうか?」
と内心ヒヤヒヤしながら(イヤほんとに)の発刊でしたが、皆さまは暖かく受け入れてくださって感謝感激雨あられです。
実は社内でも「こんなことやってなんの意味があるの?」という声もありましたが、皆さまにメッセージを伝えたいという気持ちは抑えきれず、半ば強引にやってしまいました。
でも今は思い切ってやってみてほんとうによかったと思っています。
皆さまの励ましの声を読んでいるとじーんとしてきます。涙が出そうです。
こういうこころの交流は"給料がアップする"とか"出世する"とかとは又違った仕事のやりがいや誇りにつながるんです。
とってもうれしい瞬間です。

初回の「阪急お客さま新聞」には"桜の花びら"を同封しました。時期的にも桜の時期なので、少しでも春の気分を感じていただければと社員で手分けをして約一〇〇〇枚の花びらを折りました。
当然、仕事中にはできませんので、残業中や又は自宅に持ち帰り、内職(?)のように社員ひとりひとりがこころを込めて作りました。
わが家の8歳、6歳、3歳の3人娘も作るのを喜んで手伝ってくれました。
「パパのさくらはきれいにできてるね、パパってすごーい!」
なんて会話もあり、日ごろ仕事に追われていて、なかなかこどもたちと遊んでやる時間がとれないのですが、父親の権威を保つ(?)ことが出来たりして"ひょうたんからコマ"の出来事でした。(中にはぶさいくな花びらもあったようですね)


★いただいたお客さまの声の一部をご紹介させていただきます。

○おや?又格安旅行のお知らせ?と封を切ったら、まあなんと"ぶきっちょ"な桜の花びらがこぼれてきて思わずお返事を書きたくなりました。こういう"ちょっとした事"に私、感じ入るんです。(T・K様)


○旅行会社各社から色々とダイレクトメールが届きますが、このような楽屋の様子が披露されるのは初めてで大変興味があります。旅行に出かける者と旅行会社の距離が縮まった思いです。(K・O様)                                                  

○思わず一気に読んでしまいました。平易な文体と無駄のない言葉、まとめ。
目の前であなたと対話している様な感じで、人間像が浮かんできます。
この語り口で来月もぜひ続けてください。楽しみにしております。期待!期待!(M・A様)

○最初は活字だけのなんとも味気ない印刷物が送付されたなーという感じでしたが、一応目を通して見るかと思いながらなにげなく手にしてみるとプロの方の文章と違う温かさというか身近に感じられる事多く、楽しみながら目を通しました。私も10日間ほどイタリアを体験しましたが、
「そうそう!」と同感する部分が多くありました。(M・T様)

○「社員のないしょ話」大変面白く読ませていただきました。苦言なんてありません。むしろ感謝しております。これからも阪急愛好者により良いコース提供をお願いします。がんばれ阪急トラピックス!(T・M様)

○初めてこの新聞を見たとき、ほんとうのこと言うとあんまり期待していなかったのですが、読みやすい文章につられて夢中で読んでしまいました。これからの目次を見てますます期待しています。(H・K様)

○「阪急お客さま新聞」を手にし、一気に読み終えました。こういう本音の記事は親近感を抱き、貴社のイメージアップに寄与すると思います。(K・O様)

○筆者の顔写真、風景写真、イラストなどを掲載してほしいです。(M・T様)

○新聞お送りいただきありがとうございました。楽しく読ませていただきました。私の数回のヨーロッパ旅行を思い出し笑ってしまいました。(Y・K様)

○「お客さま新聞在中」の書状を外出直前、玄関先で受け取りただちに開封、大いなる好奇心を持って読み始めました。田中さんの飾り気ない話し方、内容に思わず引き込まれ最後まで読み終え、楽しい気分で外出しました。大変興味深く面白い内容だったのでその日は「愉快気」で一日中充実した一日でした。肩のこらない面白く楽しい内容や旅行会社と客の関係を超えた連帯感を感じさせてくれるものとおおいに期待しています。(A・M様)        

○封筒を開けたらピンクの花びらが・・・
はじめまして!お便り楽しく拝見いたしました。あなた様のイタリア駐在中の出来事、ハプニングご苦労があったのですね。あなたの「ないしょ話」で知識と常識を学びいつの日か1生に1度はイタリアに行きたいと思います。(I・H様)

○この2・3日で一気に春が訪れました。「阪急お客さま新聞」はこの春の先駆けのようにやってきました。良い企画ですね。御社と我が家との距離が近くなり、より親しみやすくなったように思います。(K・H様)

○初めて見る「お客さま新聞」の文字に何か楽しそうな気がして封を開けると、そこにはピンクの桜の花びらが入っていました。その手作りの花びらに私は阪急皆様の心の優しさと手のぬくもりを感じ、ほのぼのとした気持ちになりました。私は去年十一月に「おまかせイタリア」に参加しました。
田中さんの文面にひとつひとつうなずいてしまいました。「これを行く前に読んでいたら」と思いながら、いえ、行って来たからこそ良く分かるのだと納得し、次回の新聞が楽しみになりました。(N・Y様)

○この新聞これからも読みたいです。書き手の方の人柄をいろいろ想像したり、人生観、価値観など一〇〇人いれば一〇〇人の人生。ちょっと泥臭い話でもいいじない、予告なしに廃刊・休刊になってもいいじゃない、ないしょ話 待っています。 (M・K様)

本当にありがとうございました。
これらの励ましの声は僕にとって栄養ドリンク一〇〇万本に値します。
休刊・廃刊にならないように頑張ります。

ご質問や旅行に対するご要望もいただきましたが、
現状では全てのお客さまにお返事することが出来ません。
ほんとうに申し訳ありません。可能な限り、この誌面を通じてお返事させていただきたいと思いますので、どうぞお許しください。


*皆さまからのご要望へのお返事*

●お一人参加の旅を増やして欲しい、一人部屋追加料金が高いので安くしてほしい。
〈お返事〉--数年前、弊社も相部屋制を受け付けていた時期があるのですが、相部屋の方との相性がうまくいかず、現地でやはり一人部屋を手配してほしいというご依頼を受けましたが、満室の為手配できないといったことや、お客様同士のトラブルが多発しましたので、現在は積極的には実施できておりません。しかし数多くのお客さまから一人参加の旅、相部屋受けを求める声を、最近特に多くいただくようになりました。
相部屋制は手配の関係上、旅行会社側もそれなりの体制を整える必要がありますので、一斉に導入することは難しいですが、まずは国内を中心に少しづつ、コース限定ではありますが、お受けするようになってきております。
又、海外旅行でも時期により、「お一人様参加応援日」として追加代金を半額にする出発日を設定したりしてきています。まだまだ満足のいくレベルではないとは思いますがどうぞ見比べてみてください。

●銀行振り込みではなく、郵便局振込みの体制を整えて欲しい。
〈お返事〉--現在は銀行振り込みによるお支払いをお願いしておりますが、振り込み手数料がかかり改正をしてほしいという声を多くいただいております。
郵便局振り込みに関しましては、導入に向け、現在社内で検討を進めておりまして、いつから開始できると現段階でお約束はできないもののいずれは遅ればせながら対応できるようにしたいと考えております。
ご不便をおかけいたしますが、今しばらくお待ちください。

●阪急は地方のお客のことを考えていない、出発が早い、帰りが遅い。
〈お返事〉--おっしゃることごもっともです。早朝発のツアーですと、集合に間に合わず、前泊を余儀なくされるコースも中にはございます。
私どももできるだけお客さまに快適な内容を提供できるようこころがけておりますが、団体席という枠組みの中で、混雑期などは希望通りの時間でお取りできない場合や、そのご連絡が遅くなる場合もございます。
ご不便をお掛けして誠に申し訳ございませんが、ご理解ください。

●他社はツアー終了後、集まって写真交換会など行っている。
阪急はなぜやらないのですか?
〈お返事〉--一部において不定期に写真交換会などをやっている部署もありますが、会社の制度としては現状ありません。
個人的にはお客さまとのコミュニケーションの為にもやりたいと思っています。
又、「阪急お客さま新聞」の読者の皆さまがそのようなコミュニケーションの場の母体となればいいなあと思っています。いかがでしょうか?

又、中には「こんな個人的な話など聞きたくない!即刻送付を停止するように」や、過去ご参加いただいたツアーの内容に対する厳しいご意見も頂戴いたしました。真摯に受け止め、今後の旅作りの指針にさせていただきます。
ありがとうございました。

阪急交通社は「できるだけ良心的な価格で内容満載のお得感のある旅行」を皆さまにご案内できるよう努力してまいりましたが、過去において価格を安く設定することを第一優先にした為、品質(内容)が伴っていっていないツアーも一部にはありました。
このままではいずれお客様から見放されてしまうという危機感を持ち、2004年2月に「品質管理に関するガイドライン」を社内で策定し、ツアー企画時のルールを決めました。
さらに2004年4月には品質管理課を組織し、ひとつひとつツアー内容の見直しを始めました。今もってまだ完全とは言えませんが、以前に比べるとお客さまアンケートの内容をみても
「阪急のツアーは内容がよくなった」というお声が少しづつ増えてきています。
まだまだ未熟な私たちではありますが、皆さまの声に支えられながら、お客さまにたくさんの楽しい旅の思い出を作っていただきたいという思いを胸にこれからも頑張ります。
今後とも飾らず自分の言葉で皆さんに本音をお話していき
たいと思いますので、どうぞおつきあいくださいね。


それでは、前回からの続きでイタリアの現実についてお話を始めましょう!

○イタリアではストライキが毎日のように起こるって?
イタリアといえば代名詞のように言われるのがストライキ(イタリア語ではショペロ)のあまりの多さです。
日本では春闘交渉の時の戦術として、会社側が要求を受け入れない場合の最後の切り札として用意しますが、実際にはストに突入する前に双方にて妥協点が見出され、合意してストは行われないのが普通です。
ところがイタリアでは毎日のようにストライキが起こっています。
イタリアの労働者にとってストライキとはなんなのでしょうか?
実際聞いてみたところ、彼らの答えは「労働者のお祭りのようなもの」でした。
お客さんが困ろうがどうしようがまったくおかまいなし。
自分は仕事しなくて良いから"ラッキー"ってなもんです。

イタリアは労働者の賃金も低く、組合も強く、労働者も主義主張が強いので、ストライキをやること自体は仕方がないのかもしれません。
ただ、私たち外国人旅行者にとって困らされる最大の点はストライキをやるのかやらないのか直前まではっきりしないということです。
例えば、飛行機に関係するストライキの場合、すべての部署がストライキをするのではなく部分的に行われるのです。
なぜそんなことが起こるのかというとそれぞれの労働者が所属する組合が違うからです。
ものすごくたくさんの組合があるのです。
飛行機関係だけでもパイロット、地上職員、空港公団職員、税関、管制塔、などすべて組合が違い、
それが複雑に入り組んでいます。
どの部署が何時から何時までどの便がストをするのかがわからない。
関係者に問い合わせても人によって言うことが違う。

またイタリア人にありがちなことですが、「知らない」なら「知らない」と素直に言えばいいものを、
さも知ってるかのように自信たっぷりに語る。
それによって又混乱が起こる。
イタリア人は基本的に親切です。悪気はありません。
人にものを尋ねられたら、ていねいに一生懸命教えてくれます。
こんな逸話があります。
「5人のイタリア人に道を尋ねた。
その5人が5人とも違う道を教えた。
しかしそのどれもが間違っていた」と。
結論から言うと、よほど大きなストライキ(いわゆるゼネスト)以外のストは
当日にならないとやるのかやらないのかがはっきりしないケースがほとんどです。

有名なポンペイ遺跡などの観光施設やウフィッツイなどの美術館もストライキをする場合があります。
あらかじめやらないならやらないと言ってくれれば代替の手段を講じることもできるのに当日行ってみなければわからない場合が多々あるので、私たち旅行者は振り回されてしまうのです。
当日出社してきた社員の数によってストをするかどうか決めるという信じられないケースもありました。

ストライキをして周りにかける迷惑をなんとも思わないという感覚は私たち日本人には理解しにくいですが、イタリア人の根底にはカトリック(キリスト教)の精神があることも理由のひとつかもしれません。
カトリックはこう教えています。
「仕事(就労)は罪だ」と。

飛行機がストをするかもしれないという情報が流れたらツアー中の添乗員は、航空会社とコンタクトをとりながら状況を把握し、ストが決定したらすぐ別便への振り替えやホテル、バスの手配などを行います。
電話がつながりにくかったり、航空会社のスタッフに逆ギレされたり(実際こういうことよくあるんです。
イタリア人は我慢や忍耐という言葉を知らないようです)して添乗員も大変な苦労を強いられます。

イタリア人は基本的に人懐っこく親切で気持ちの良い
国民性を持っていますがそれは物事がスムーズに行っている時や気持ちに余裕がある時です。
1度トラブルや不具合が生じたときは彼らはパニックに陥ったり流れが完全にストップしてしまいテコでも動かなくなります。
「そんなこと言われても自分の責任じゃない!」と一旦開き直ってしまったイタリア人には「サービス業とは」とか「その横柄な態度はなんだ!」と怒ったところでもう駄目なのです。相手が落ち着いてくるのをじっと待つしかないのです。

もし旅行中、運悪くストライキに遭ってしまったら、
これも運命だとあきらめてトラブルを楽しむくらいの気持ちでドンと構えていましょう。
その時は大変でも時が過ぎればきっと懐かしい思い出になると思いますよ。
大丈夫です。今まで数多くの旅行者がストライキで足止めを食らいましたが、日本に帰れなかった人はひとりもいませんから。
(つづく)  
                        
ということで、今回も前段が長くなってイタリア話は少なくなってしまいましたが、「もう読みつかれたよ」という声が聞こえてきそうですので、「社員のないしょ話--その2」はこれで終わりです。

今後どのような話の展開になるか、僕にも分かりません。「こんな話を聞きたい」「こういう展開にして欲しい」というご希望がありましたらどしどしお寄せください。素人ですので、どこまで応えられるかわかりませんが努力します。

今月も最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
また 来月お会いしましょう!