みなさまお久しぶりです。しんじです。
今週もイタリア話をお伝えいたします。
今回は、美術館の楽しみ方、教会の味わい方についてお伝えしようと思います。

正直、私は美術館や博物館というものが苦手でした。
2時間鑑賞時間があっても20分くらいで見終えてそそくさと休憩するタイプです。
世界的な名画と言っても全然良さがわからないのです。

「遠近法?印象派?ここの技法が・・・なんていってもわかんないよ」

結構、こういうタイプの人多いんじゃないでしょうか?
でも僕はある時から美術館が好きになっていったのです。


それは現地のガイドさんの言葉がきっかけでした。


「遠近法がどうとかなんてどうでもいいのよ。美術を勉強している人じゃなければ興味ないでしょ?
それよりもその絵を見た直感を大切にすればいいのよ。例えば絵を見て「なんか落ち着くなあ」
とか「吸い込まれるような感じだな」とか「優しい感じがするなあ」

つまり「この絵なんか好きだなあ」っていうものに出逢えたらそれは幸せなことなのよ。

あとね、できればそれを描いた画家の性格や人生、エピソードなんかを予習しておくとぐっとその絵を身近かに感じるようになるわよ。

例えばウフィッツイ美術館の"ヴィーナス誕生"や"春"を書いたボッティチェッリ。

彼のタッチを見ると女性的で繊細な感じがするでしょう?
でも実際には豪放闊達な人でメディチ家の豪華王ロレンツオと一緒にルネサンスの贅を謳歌したそうよ、でもその後狂心的な怪僧サヴォナローラに心酔し、贅沢をした自分を悔い、自分の書いた絵の多くを燃やしてしまったんですって。こんな話聞いてると画家自身に興味が湧いてこない?」


この話を聞いた時、肩の力が抜けたっていうか...
今まで小学校の社会見学のように感じていた美術鑑賞がとっても身近に感じるようになったのです。

ちなみにイタリアの絵画で僕が一番好きなのは、ツアーではあまり行かないのですが、

フィレンツエのサンマルコ美術館にある「フラアンジェリコの受胎告知」です。

ダビンチやラファエッロよりずっと前の人なのですが、僧侶だった彼は絵を描く前、祈りを捧げてから筆をとったそうです。
決して派手ではなく、芸術的価値もその後のルネッサンス画家達のそれに比べると劣るのですが、
見た印象が優しくて、柔らかくて、控えめで、すがすがしい。
その場にたたずんで、じっといつまでも見ていたいと思える絵なんです。

又、教会にも似たようなことが言えます。

フィレンツエで住んでいたアパートはサンタクローチェ教会の裏でした。
その教会は朝が特にいいんです。
祭壇の後ろのステンドグラスから朝日が差し込む、キラキラと幾重にも色の魔術をおりなし、
一条の光は神が天から降りてくるような錯覚さえおこします。

静寂の中、僕は椅子に座って力を抜き、自分のこころの音(声)に耳を傾けます。
気がつけば30分くらい経ってしまっている。
精神は安らかに落ち着いていて、感性がとぎすまされていくのがわかる。

ストレスが溶けていく・・・

こころと身体を浄水器にかけたような感覚(なんと俗っぽい表現!)
それも日本の日常ではなかなか味わえないかけがえのない体験でした。
観光や食事や買い物だけが旅行の楽しみじゃありません。
ヨーロッパには「ホンモノ」がたくさんあるんです。
心で感じてください。
とっても心が豊かになりますよ。