スイスのテレビ・ラジオ放送受信料金

スイスにも日本のNHK受信料に相当するテレビ・ラジオ放送の受信料金システムがある。

日本の受信契約は聴取者とNHKの間で交わされ、聴取者はNHKに受信料金を支払う。これがスイスでは、テレビ・ラジオについての連邦法(Bundesgesetz über Radio und Fernsehen、略称RTVG)によって「テレビ放送もしくはラジオ放送を受信できる機能を備えた機器を設置した者は、受信料金を支払わなければならない」とされているのがポイント。つまり、公共放送を受信できるかどうかということは関係なく、テレビ又はラジオを持っている世帯はすべてこの受信料金を支払う決まりになっている。

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スイスの受信料金は、スイス南西部のフリブールに拠点を置くBillag(ビラグ)という会社によって徴取されている。

現在の課金設定は、ラジオ聴取、テレビ聴取、テレビ&ラジオ視聴の3種類。いわゆるテレビ機器・ラジオ機器がなくても、インターネット接続ができる携帯電話やコンピュータがあればテレビおよびラジオを視聴できる環境にあるので、テレビ&ラジオ料金を払わなければならない。現段階の規定で受信料の支払を免除されているのは、テレビもラジオもインターネットもない世帯、国外に居住(住民登録)している人、老齢年金もしくは障害年金の補助金(Ergänzungsleistung、略称EL)受給者、任意の要介護レベルにある介護施設入居者、もしくは大使館や外交官など外交特権がある場合のみだ。

ビラグによって徴取された受信料金は、公共放送局だけでなく各地のローカルテレビ&ラジオ放送局にも分配される。ただし公共放送局への配分はとても多く、その金額は受信料総額約13億スイスフランのうち何と12億スイスフラン!ローカル放送局(スイス全土に何十もある)に分配されるのは5400万スイスフラン程度だ。

最近ではスマートフォンやタブレットPCなどの普及もあって、テレビ・ラジオ放送を受信できる環境が多様になっている。現在の法律にあるような「テレビがある」や「ラジオがない」といった機器を基準とした課金判断が難しくなっているため、政府は全世帯一律の課金制度(受信機器や設備の有無にかかわらず、全ての世帯が均等に統一料金を払う)を導入したい意向を持っている。そして来る6月14日(日)には、この全世帯一律課金システムを含むテレビ・ラジオ法の抜本的な改正についての是非を問う国民投票が行われる。

現在ビラグが行っている受信料金の徴取業務を他の会社が競争入札で請け負うことができるようになったり、一定以上の年間収益がある企業・業者に対しても一律の受信料(個人世帯向け料金より割高)が課されるなど改正点はものすごくたくさんあるのだが、一番の焦点はやはり個人世帯への一律課金。日本でもテレビのない世帯にも受信料を課す可能性を検討中との報道が数か月前にあったが、これがスイスでは近い将来導入されるかもしれないのだ。

案件によると、現在3種類ある料金カテゴリー(ラジオ受信165スイスフラン、テレビ受信286.10スイスフラン、テレビ&ラジオ受信451.10スイスフラン、すべて年額)を撤廃し、全世帯に400スイスフラン程度を一律で課金する計画とのこと。

もしこの案件が国民投票で可決されると、ほとんどの世帯は現在テレビ&ラジオ受信料金を支払っているので、彼らにとっては受信料が将来安くなる。高齢者施設の一般入居者も、個人で受信料を支払う必要がなくなる(介護施設や病院・寮などは、その規模に応じて施設側が一括で受信料を払う)。しかし逆に、サービスを受けていない、受けられない、もしくはサービスそのものを必要としないにもかかわらず、お金だけ払わなければいけない人も少なからず発生することになる。

また、徴取業者(現在はビラグ)は自治体の住民登録データを基にして各世帯に請求書を送付する方法をとるそうで、不要な個人情報の流出に加え、情報が別の目的に利用されるかもしれないといった不安もある。

投票前の現在(5月中旬)の世論は、賛成と反対がほぼ半々。彼らが自分が属する多数派の得を取るのか、マイノリティの不公平感に共感・連帯するのか、興味深く見守りたい。

参考ウェブリンク

テレビおよびラジオについての連邦法
Bundesgesetz über Radio und Fernsehen (RTVG)
https://www.admin.ch/opc/de/classified-compilation/20001794/index.html

日本の放送法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO132.html

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Asami AMMANN-HONDA

スイス東部トゥールガウ州の農村在住。元書店員、現在は兼業主婦(介護補助士&日本語教師&日独英通訳)。趣味はスポーツ・園芸・料理、専門は音響映像技術。

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