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スイスの夏の飲み物といえばコレ!
5月の半ばぐらいになると、白い花を付けたホルンダーHolunder(日本語ではニワトコ、英語ではエルダーElder)の木があちこちに見られるようになる。8~9月頃に生る赤黒い実はビタミンCやカルシウムを豊富に含み、また様々な薬効が期待できることから、葉や花も民間療法に用いられている。ホルンダーの木が神聖な「家の守り神」的存在であると信じられている地域も少なくなく、ホルンダーの木を切ってはいけない(→切るとその家や家人に不幸や祟りがある)という言い伝えもあるぐらいだ。
このホルンダーの花からはシロップを作ることができる。スイスではホルンダーブリューテンシロップHolunderblütensirup(そのまま「ニワトコの花のシロップ」という意味)と呼ばれ、これを水や炭酸水で割ったものは夏のフレッシュな清涼飲料として幅広い世代に好まれている。日本でも最近はフレーバーウォーターが大流行していると聞いたが、ホルンダーのフレーバーウォーターもあるのだろうか?
(隣人のルースさんから頂いたホームメイドのシロップ)
シロップの作り方はとても簡単で、砂糖とクエン酸を溶いた水にホルンダーの花を2日間ほど浸してフレーバーを抽出させたものをろ過して熱するだけだ。ホルンダーの木がある家では自作することも多いが、出来合いのものもスーパーなどで簡単に入手することができる。
ここ数年、スイスではこのホルンダーの花のシロップとミント&ライム&プロセッコProsecco(スパークリングワイン)&炭酸水のカクテル「フーゴHugo」が流行中だ。夏のカクテルというとラム酒とミント&ライム&炭酸水のモヒートMojitoが大変有名だが、フーゴは要はラム酒の代わりにスパークリングワインと甘い花のシロップが入った、ライム&ミントフレーバーの爽やかなロングドリンクだ。
「フーゴ」の名前でこのカクテルが最初に作られたのは今から10年ほど前で、オーストリア・南チロル地方のとあるバーが始まりだとのこと。ワインを炭酸水で割ったゲシュプリッツターGespritzter(もしくはスプリッツァーSpritzer)と呼ばれるカクテルも夏の定番として知られているが、コレの発祥も実はオーストリアなのだそうだ。
ちなみにスイスでゲシュプリッツターというと、炭酸水又はレモネードで白ワインを半分に割った飲み物のこと。リンゴ果汁を炭酸水で割ったアプフェルショーレApfelschorleは、年間を通じて冷たいソフトドリンクのスタンダードだ。
夏のソフトドリンクというと、アイスカフェーEiskaffeeもお勧め。日本に見られるアイスコーヒーの親戚ではあるが、飲み物というよりはむしろコーヒー(ミルク入り)と一緒にグラスに入っているたっぷりの生クリーム(基本的に無糖)とバニラアイスクリームをメインに楽しむ夏の冷たいデザートという感じだ。
これらの飲み物は、スイスのドイツ語圏でよく見られるもの。フランス語圏やイタリア語圏にもそれぞれの地域で人気のサマードリンクがあるはずなので、現地を訪問された際には是非ご自身で開拓して頂きたい。
これは以前にも少し触れたことだが、甘くない冷たいソフトドリンクというのは、スイスではとても稀だ(ビール以外のドリンクは基本的にあまりばっちりと保冷されておらず、グラスにも氷が入らないことが多いので、本当に「冷たい」ドリンクが提供されることも稀)。麦茶やウーロン茶のような渇きを癒す無糖のソフトドリンクは、レストランやカフェのメニューには(私の知る限り)ミネラルウォーター以外存在しない。アイスティーはどこのレストランにもあるが、基本的に既に砂糖入りで甘く、更にレモンやピーチ(!)などのフレーバー付きのものがほとんど。フレーバー無し・もしくはアイスミルクティーという概念はないと考えていい。無糖の冷たいウーロン茶やジャスミン茶を出したら、日本を始めとするアジア各国からの観光客にはもちろん、スイス人にも需要があるのでは...と思っているのだが、どうだろうか??
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Asami AMMANN-HONDA
- スイス東部トゥールガウ州の農村在住。元書店員、現在は兼業主婦(介護補助士&日本語教師&日独英通訳)。趣味はスポーツ・園芸・料理、専門は音響映像技術。