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オランダ

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オランダで今年始まる「ベーシックインカム」って何? 

皆さん、こんにちは。

さて、新年(2016年)初に書くこの記事では、今年からオランダの20都市の一部で実験的に導入される予定の「ベーシックインカム」制度についてご紹介させて頂きます。この制度は、「就労や資産の有無に関わらず、全ての個人に対して生活に最低限必要な所得を無条件に給付する」というオドロキの社会政策であり、現在世界の注目を集めています。ヨーロッパではオランダとフィンランドが、今年いち早くこの制度を取り入れることになり、日本でもニュースになったようですね。

 

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オランダのベーシックインカムでは、就労の如何に関わらず無条件に、成人には一人当たり900ユーロ(約11万5千円)、妻帯者には1,300ユーロ(約16万6千円)が毎月、銀行口座に振り込まれることになります。まるで夢のような話ですよね。しかもこの制度により、行政側は失業保険や生活保護などの社会保障管理コストを削減することが出来、市民側は安心して自分の本当にやりたい仕事に従事することが出来(そのため長期的な就業率は高まり)、お互いにハッピーであり、将来的にもより幸せな社会が形成されると言われています。とにかく、最低限の生活は保障するから、その生活に甘んじるのか、それとも働いて余裕を持つか、お金になる仕事をするのか、それとも自分の本当に好きな仕事をするのか、全てあなた次第、というわけです。この一見ありえない、夢のような制度が成功すれば、貧困問題、賃金格差問題、劣悪な労働環境、仕事の機械化による失業率の増加、犯罪の増加、男女・人種差別問題など、あらゆる問題に対する処方箋になるとまで言われています。ただし、過去、実際にこの政策を長期的に実施した実験例が世界で数例しかないので、成功するとは限らず、これからの実験の行方がどうなるのかとても興味深いところです。

 

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人って本来怠け者なんではないの?生活出来るお金があれば働く意欲を無くしてしまうのではないだろうか?国としての生産性が低くなるのでは?それとも人間には本来「働きたい」「社会に貢献したい」という本能があるのか?などなど、色々な疑問が浮かんできますよね。そこで、オランダで初めて実際にベーシックインカムを受給している男性の体験談が新聞に掲載されていたので、かいつまんでまとめてみました。

 

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オランダのクオリティー新聞「NRC Handelsblad」のキャリア面に掲載された「Mr. ベーシックインカム」と題されたインタビュー記事。オランダのベーシックインカム初の受給者は、フランス・ケルファーさんというフローニンゲン市在住の54歳の男性です。

 

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2015年の7月から、ケルファーさんは「ベーシックインカム第一号」として毎月1,000ユーロ受給しています。財源はまだ国からではなく、MIES財団(経済と社会の革新を研究する財団)のクラウドファンディングにより賄われているとのこと。ケルファーさんは、自家栽培の農園とその中に建てたレストランを経営しています。レストランでは週に2回、無料で訪問客に食べ物をふるまっているそうで、学生、老人、失業者など地域の様々な人が食事をしながら触れ合うコミュニティースペースになっているそうです。ただし、この農園とレストラン経営からの儲けはなく、労働力もボランティアの人達に支えられているそうで、そこで働く人達も学生、障害者、失業者、バーンアウトで休職している人など様々なバックグラウンドの人達が集まっています。ケルファーさんはコピーライターでもあり、昼間は農園とレストランの仕事、そして夜には生活のためにコピーライターの仕事を掛け持ち(時には深夜3時まで働くこともあったそうです!)していましたが、ベーシックインカムを受給するようになってからは生活費の心配が無くなり、自分の本当の情熱である昼間の仕事に専念することが出来、さらに愛する家族と過ごす時間も取れるようになったとのこと。ケルファーさん曰く、「人間は本来働く生き物」「ベーシックインカムは信用に基づく政策で、人間の多様性を包容する大きなステップ」。オランダにはケルファーさんのように社会に貢献する活動をしていてもそれがお金になって返ってきていないケースがかなりあるそうで、ベーシックインカムとはまさに相性がぴったりのケースといえるでしょう。

 

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今年、ユトレヒト市をはじめとし、20都市で実験的に導入されるというベーシックインカム制度。この実験により人間と社会がどう変化するのか非常に興味深いところです。就労者の約半数がパートタイムでフレキシブルな労働形態が認められ、社会福祉がしっかりしているオランダは土壌が整っているのでしょうか。ともあれ実験が成功し、今後さらに広範にこの制度が広まることを願うばかりです。

 

 

現地記者:
親松恵子

自由の国オランダに魅せられ移住して、気がつけば18年。 現在は、フリーで執筆、翻訳、現地ガイド、各種コーディネーション等、何でもやっています。 傍ら自分のアート活動も楽しんでいます。

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