ウィーンを一望するカーレンベルクの今と昔

ウィーンもそろそろ少しずつ気候が良くなり、春の足跡が近づいてきました。今日はウィーンを一望できる素敵なスポットを紹介します。ここに行けば、ドナウ川からシュテファン大聖堂、シェーンブルン宮殿まで、ウィーンの見どころを一気に網羅できますよ!

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ドナウ川を臨んで。手前はブドウ畑が広がっています。前景に見える建物はホイリゲのSirbu。

ウィーンの三方を囲むウィーンの森の中でも、北側はいくつかの低い山々が連なっています。その中でも、カーレンベルクKahlenberg、レオポルズベ ルクLeopoldsberg、ヌスベルクNussbergなどはウィーン人の憩いの場として週末はハイキングやホイリゲを楽しむ人たちで賑わいます。

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カーレンベルクの一番眺望のいいところに広がるテラス。手前はセルフサービスのカフェ、奥は結婚式なども催される4つ星レストラン&ホテル。天気のいい日は皆さん外でのんびり。

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レストラン/カフェのほうのテラス。日曜朝はビュッフェが楽しめます。

このカーレンベルク、ウィーンの人々に親しまれている割に、よくお隣のレオポルズベルクと取り違えられたりして、名前をうまく覚えてもらえません。理由は その名付けにあります。カーレンベルクは、元々の名前をSaubergもしくはSchweinsberg(どちらもブタ山もしくはイノシシ山の意味)とい いましたが、1628年にフェルナンド2世がクロスターノイブルク修道院からこの山を譲り受けた際にJosephsbergと改名されます。

ところが、1663年にレオポルド1世がお隣の山に教会を建てた際、その山の名前がレオポルズベルクと変更になり、その山の元の名前であった「カーレンベ ルク」が横滑りしてSauberg/Schweinsberg/Josephsbergに割り当てられ、今に至ります。

ちなみに、カーレンベルクは「ハゲ山」という意味で、そのうっそうとした森に囲まれた見かけとは全く逆ですが、これも、元カーレンベルクであったレオポルズベルクの一部がハゲ山であったことを知ると納得できます。

ウィーン人がこの二つの山、どっちがどっちかわからなくなったら、「ホテルと礼拝堂と送電塔があるのがカーレンベルク、教会と廃墟のお城があるのがレオポルズベルク」と覚えているようです。

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夕陽の中のウィーン。右手に目を凝らせば、シェーンブルン宮殿のグロリエッテが見えます。

このカーレンベルク、高さは484メートルと丘程度ですが、ヨーロッパの歴史の中で重要な位置づけを持ちます。1683年の第二次ウィーン包囲により、城 壁に囲まれたウィーン(現在のウィーン旧市街)は15万人のオスマントルコ軍に2カ月に渡って包囲され、中に住む市民たちは籠城を強いられていました。

その時、トルコに対してカトリックの団結を見せようと呼び掛けた皇帝レオポルド1世に応え、ポーランドからヤン3世(ヤン・ソビエスキ)が兵を率いて駆け つけ、包囲されたウィーンを見下ろすこのカーレンベルクに陣を張ります。ヤン3世はロートリンゲン公カールなどの援軍と共に9月12日の早朝、カーレンベ ルクを駆け下り、城壁を破ってウィーンの街へ突入する寸前だったトルコ軍を撃退します。

この事件は、イスラム世界のヨーロッパ侵略を食い止め、キリスト教世界を守ったという意味で、歴史的に大きな意味を持ちます。その300年後の1983年 9月13日、当時のローマ教皇で、ヤン3世と同じポーランド人であるヨハネ・パウロ2世がこの歴史的勝利の地を訪れました。その記念展示室がこの礼拝堂に あります。

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展示室が入った礼拝堂

私が訪れた日は、ちょうどポーランド人の観光客が訪れていて、ポーランド人にとっては一種の聖地のようになっているという印象を受けました。

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ヨハネ・パウロ2世の訪問の記念碑。ドイツ語とポーランド語で記述があります。

そんな歴史に思いを馳せながらカーレンベルクのテラスからウィーンを見下ろすと、350年の歴史を遡り、ヤン3世になった気持ちで、危機に瀕したウィーンをどんな風に救い出そうかと、考え込んでしまいます。

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カーレンベルクの展望台からの絶景。煙突(フンデルトヴァッサー設計のごみ焼却場)の右斜め上にシュテファン大聖堂の一本の尖塔が見えます。あの辺りが旧市街。

カーレンベルクへのアクセスは、地下鉄ハイリゲンシュタット駅から38Aのバスで。ウィーンからの半日旅行にどうぞ。お隣のレオポルズベルクまでは、なだらかな道を歩いて30分ほどで、気持ちのいい散策が楽しめます。

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ひょろ

オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。

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