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オーストリア

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「ウィーン軍事史博物館」で、サラエボ事件の車を前に、戦争と人類の歴史に思いを馳せる

ウィーンを訪れる歴史好き必見の「ウィーン軍事史博物館」。かつてヨーロッパの大国であったオーストリアの軍事の歴史を、17世紀から第二次世界大戦までじっくり展示した博物館です。大砲や銃、戦車や戦闘機、軍服や剣など、軍事に関するものが数多く展示されていて、見ごたえもたっぷり。
 
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ウィーン軍事史博物館
 
この博物館の最大の目玉は、「サラエボ事件の車」ですが、そのほかにもこの博物館には数え切れないほどの貴重な展示物があり、歴史好き、軍事好きは、一日ここで過ごしても足りないくらい充実した時間を過ごせることでしょう。
 
まずは、建物からご紹介します。ウィーン南駅からバスで3駅の場所にある、レンガ造りの優雅なこの建造物は、19世紀中ごろに作られた72の建造物からなる兵器庫の一つです。この建物自体は兵器庫内の博物館として建築されたもので、博物館として作られ、現在も使われている、オーストリア最古の博物館とされています。
 
この建物の入り口に、注目すべき一言があります。”Kriege gehören ins Museum.“直訳すると「戦争は博物館の中に属する」。すなわち、戦争は博物館の中に展示しておくもので、博物館の外に出してはならない、という、戦争反対のメッセージでもあるんです。軍事史博物館だからと言って、戦争礼賛になっていない所に、奥の深さを感じます。
 
 
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入り口の案内にも深い意味がある
 
そんな歴史ある建造物の中に一歩足を踏み入れると、ため息が上がることと思います。ここは、ただ、軍事関連のものを並べただけではなく、軍事史をオーストリアと言う国の、ひいてはヨーロッパ全体の歴史としてとらえ、自然科学、歴史、美術、テクノロジーを総合的に展示してある、かなり規模の大きい博物館なんです。
 
 
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各時代の貴族や戦士の像が立ち並ぶ入り口ホール
 
 
それではまず、この博物館の一番の目玉である、サラエボ事件の車を見てみましょう。
 
この車は、1914年にサラエボで暗殺された、オーストリア皇太子フランツ・フェルディナンドが乗っていた車です。この事件が第一次世界大戦の引き金となり、近代史を塗り替えることととなりました。
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「サラエボ事件の車」
 
皇太子とその妻ソフィーは、最後部の座席に座っていて、セルビア人の民族主義者が手にした銃で撃たれ、2人ともほぼ即死でした。後部座席のちょうどソフィーが座っていた関(向かって左)の鉄の壁の部分に穴が開いていますが、この穴を貫通した銃弾は、ソフィーの腹部に命中し、致命傷となりました。
 
このときに使用された銃が3つ横のケースに並んでいます。実際、暗殺チームは合計4つの銃を持っていました。実際の暗殺がここに並べられた3つの銃のうちの1つでなされたのか、失われた4つ目の銃によってなされたのかは、現在謎とされています。
 
 
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皇太子フランツ・フェルディナンドが着用していた礼服
 
また、同じ展示室には、暗殺時に皇太子が着ていた軍服が展示されています。襟元の見えないほど小さな穴から銃弾が入り、それが致命傷となりました(軍服が破かれているのは治療のためです)。
 
さて、この2発の銃弾によって世界を変えた第一次世界大戦の歴史が、次の部屋から展示されています。この展示室は最近改装され、体験型の非常に興味深い展示となりましたので、ぜひゆっくり時間を取ってご覧ください。
 
 
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第一次世界大戦の展示室。手前のトーチカには、実際に中に入ってみることもできます。
 
この展示には、高射砲、トーチカ、航空機、手りゅう弾などの武器や兵士の装備などが、戦争の初期、中期、後期と時系列で並べられています。また、塹壕エリアでは、、何時間も塹壕で時間を過ごした兵士たちの追体験ができるような展示になっています。
 
 
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高射砲の展示。二階部分の通路から見下ろすこともできる展示になっています。
 
当初は、科学技術の粋を集めた武器や兵器が誇らしく展示されていたのが、戦争が泥沼化するにつれ、展示も暗さを増し、戦争の負の面が強調された、エモーショナルな展示となっています。
 
第一次世界大戦の展示は、軍事史博物館の一階右翼を占めています。反対側の左翼部分は、第二次世界大戦とオーストリア海軍の歴史の展示です。
 
第二次世界大戦エリアでは、ナチス併合の前後と、その時のオーストリアの状況を展示してあります。オーストリアの第二次世界大戦での立場や、ナチスの影響などが、かなり淡々と展示されています。
 
 
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ナチス時代に使われていたジープと戦闘機
 
また、その奥のオーストリア海軍の歴史は、今では海と接しない国となってしまったオーストリアが、以前はトリエステ(イタリア)やプーラ(クロアチア)などに軍港を持っていた様子を思い起こさせます。
 
この展示部分から一旦中庭に出ると、戦車が並んでいる展示もあります。冬期は閉まっていますのでご注意ください。
 
ここまででもうお腹いっぱいになってしまう、素晴らしい展示なのですが、さらにこの博物館には2階部分があります。
 
 
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2階の壮麗なホール
 
階段を上って左側には、三十年戦争やトルコ包囲、ナポレオン時代など、17世紀の軍事史、さらに奥にはマリア・テレジア時代の展示があり、2階の右翼は「19世紀オーストリアとヨーロッパ」の展示があります。
 
 
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上階の展示風景
 
上の階も、ナポレオン戦争で長く遠征の旅をしていた将校の生活、兵器として使用された気球、ハプスブルク家の軍服など、興味深い展示が沢山あります。ゆっくり見ていれば、1階と2階それぞれ半日ずつくらいかかってしまいそうな規模の、素晴らしい展示です。心行くまでお楽しみください。なお、写真撮影には追加の許可が必要です。受付で撮影希望の旨を伝え、有料にてプレス用のパスを発行してもらいましょう。
 
17世紀から第二次世界大戦までの軍事史がギュッと詰まった、「ウィーン軍事史博物館」。歴史が実際に動く瞬間を目の前で感じることができる、学ぶことの多い博物館です。近代史好き、軍事好きの方だけでなく、テクノロジーや建築に興味がある方、世界史を体感してみたい方も、ぜひ訪れてみてください。また、サラエボ事件の車目当ての方も、ぜひ他の部分の展示もじっくりご覧になってみてくださいね。

現地記者:
ひょろ

国際機関勤務を経て、現在は二児の子育ての傍ら、ウィーン大学博士課程に在籍中。ライター業、翻訳レビュー、ネットショップ、写真撮影など、活動は多岐にわたる。
http://wienok.blog119.fc2.comにて、ウィーンのミュージカル情報を発信中。

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