ギリシャ神話とオリーブ
ギリシャでは、11月になると、たわわに実ったオリーブの実の収穫が始まります。農家では、低い枝の実は手摘みで、高い枝の実は棒で叩いて下に敷いたマットの上に実を落とし、収穫します。家族総出、臨時作業員を雇ったりして行う大変な作業です。

ギリシャにとってオリーブは、なくてはならない存在。日本の醤油、味噌、梅干し、米に匹敵するような主要食材です。ギリシャの各地にオリーブ畑が見られ、その種類は100種類以上、国民一人当たりのオリーブ油の消費量はなんと世界一です。ギリシャ料理には、おたまで何杯分ものオリーブ油を使ったりしますし、食用の他、美容や医療、燃料などにも古代から珍重されてきました。教会の聖油として使われるオリーブ油は「光」を象徴し、ギリシャ正教の洗礼式には、体にふりかけたりもします。

オリーブの記述はギリシャ神話の中にも多く見られ、歴史的にもその関わりの深さが伺われます。今日は、ギリシャ神話の中のオリーブにまつわるお話をご紹介しましょう。
一番有名なのは、アテネの守護神であるアテナ女神のエピソードでしょう。その昔、アテナイの守護権をめぐり、海の神ポセイドンと知恵の女神アテナが争った時に、人民に、より多くの恵みを与えた方を勝利者とすることになりました。ポセイドンは塩水の泉を進呈し、一方知性の女神アテネは、聖なるオリーブの樹を創り出し、アクロポリスの丘に植えて、食料、燃料、美容、医療の糧となる豊饒なる富(オリーブの収穫)をもたらしました。その結果、人々に実質的な利益を与えたと評価されたアテナが勝利者となり、アテナ神を守護神としたアテネは、現在のギリシャの首都として栄えています。アクロポリスの丘に立つ壮大なパルテノン神殿は、その女神アテナを祀った神殿で、世界遺産にも認定されています。そのアテナが植えた聖なるオリーブの木は、ペルシャ兵が侵攻してきて木を燃やした時も、次の日には蘇って葉を茂らせ、アテナ神の力を示したと伝えられます。

ギリシャ神話は様々な伝承があることから、矛盾や違うバージョンもあります。アテナ神はクレタ島から来て、ミノア人に聖なるオリーブの木を与えたという話や、最初の聖なるオリーブの木は、ペロポネソス地方が起源とする話もあります。また、ヘラクレスの逸話では、彼がダニューブ河の岸にはえていたオリーブの木を最初にオリンピアに持ってきたとか、彼が敵を倒すために使っていた棍棒は、オリーブの幹で作られていたとか伝えられています。
また、アルテミスとアポロンの母であるリトが、デロス島で出産場所を探していた時に、聖なるオリーブの木の木陰で休み、安産の神の去来を待ち望んでいたという逸話もあります。そのアポロンの息子であるアリステウスは、初めて抽出したオリーブ油によって疫病を治療したと伝えられており、オリンポスの女神達は、オリーブ油と他のアロマオイルをブレンドして、美容用のクリームとして使用していたという逸話もあり、昔から、医療用・美容用としても、オリーブが珍重されていたことが分かります。
どれも、ギリシャにおけるオリーブの重要性を示す逸話ばかりで、興味がそそられるところです。
個人的には、私の中でも、今ではオリーブはなくてはならない食材になってしまい、いつもスーパーで、どのオリーブにしようか迷ってしまいます。(でも、味見をさせてくれるのが嬉しいです。)

2004年のアテネオリンピックでは、オリーブの枝の冠がオリンピックの勝利者に与えられ、平和の象徴として、オリーブは国連の旗のデザインにも使われています。樹齢が何千年と言われる古木もあり、夏は40近い炎天下に半年くらい雨の降らないこともあるギリシャの気候も耐える、本当に貴重で強靱な、まさに神の恵みを象徴した木だと思います。去年の夏の山火事で、そのオリーブの木がたくさん失われてしまったことを、本当に残念に思います。
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現地記者:kiyomulan
2000年に渡航。ギリシャ人の夫と結婚。
現在はアテネ海外ウェディング・コーディネーター兼通訳を行っている。
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