<その2>船長がお目当てのリピーターも多い「ぱしふぃっくびいなす」 由良和久船長の魅力に迫る

こんにちはライター久家です。

「由良船長がお目当て」でクルーズに乗るお客様もいるという「ぱしふぃっくびいなす」。前回に引き続き、由良船長のお話の中から、人を惹きつける船長の「引力」に迫っていきたいと思います!

<その1>では「船に乗ることになったきっかけ」や「船乗りになるまでのステップ」を教えて頂きましたが、今回は「船内でのお仕事」や「由良船長が大切にしていること」をご紹介します。

<船長という仕事・役割>

船に乗りはじめて32年。途中陸の勤務も経験、そして、船長になり14年。

他の船では、船長が数年で変わったりということも聞きますが、私たちは、メンバーが変わらず長く職務に当たっているため、リピーターのお客様にも親しみや馴染みがあるのではないでしょうか。「ぱしふぃっくびいなす」の船長は2名おり、交代で乗務しています。ただ、世界一周などのロングクルーズは、体調など万が一に備え、2名体制で乗務します。


『航路の企画から携わる』

「ぱしふぃっくびいなす」のクルーズは、企画チームだけではなく船長も一緒にスケジュール(どの時期にどこへ行くか)を考え、提案していきます。30年以上船に乗りつづけていますので、「船から眺めて、この時期のこのロケーションが最も美しく見える」ということをよくわかっているつもりです。船がいる「時間と場所」を考えることも重要ですね。

それに、「ぱしふぃっくびいなす」のサイズは、日本近海の様々な所(島々や水深が浅く大型船が入れない港など)に配船することが可能です。サイズの特権を活かし、普段行けないところへのクルーズも企画しています。

最近のクルーズで思い出深い航路は、「千島列島とサハリン・カムチャッカ半島」、そして「皆既日食」。千島列島は、日本近海にはない景色が広がっています。

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航海中、トドのコロニー(住み処)を見つけました。150頭ほどのトドがのんびり過ごしていましたので、近くに船を止めました。すると、10頭ほどのオスが、威嚇しながら、船に向かって泳いでくるではありませんか!?しばらく様子を見ていたのですが、トドの群れが船に真下まで近づいてくると・・船の大きさに驚いたのか、Uターンして慌てて戻って行ってしまいました(笑)

海からは、陸では見ることができない自然を楽しむことができるんです。

また、三等航海士のときに、皆既日食を船から見る機会があったのですが、慌ただしい船内業務の最中で、ちゃんと眺めることができなかったんです。仕事ですからしょうがないのですが。

そして、最近になって、また皆既日食のクルーズに乗務することができました。念願叶い、今回はお客様と一緒に見上げることが出来ました。・・本当に素晴らしかった。

皆既日食は、陸でも見られるところはあると思いますが、「海ならではの特権」もあるんですよ。陸では、雲の切れ間を待つのみ。しかし、海では、「晴れ間を見つけ、そこに向かって船で移動できること」です。「晴れ間」を探し出すことは、とても大変でしたが、ロケーションの良いところにお連れでき、お客様に感動していただいた時の達成感は言葉にできません。

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『船を操る』

船を操縦すること。それは航路を考えること。「天候により航路を変える」ということです。この「天候の先読み」が、船長の重要な仕事の一つかもしれません。

「明日、海が時化る(しける)だろう」 そう予想が出来た時にはスピードを上げて、時化る前に早めに通過したり、大回りして回避したりと判断します。時化で船が大きく揺れたりすることがあれば、船内でのお食事もショーもゆったり過ごす時間も、全てが楽しいものではなくなってしまいますからね。一番気を使うところです。

陸から海を見ることもステキでしょう。しかし、ロケーションがいいところは、海から陸を見たほうがおもしろいはずです。三陸や日本海沿岸など・・すばらしい景色はいくつもあります。

企画の時点で、場所によって通る時間も考えているのですが、例えば「ここでの夕日をぜひ見ていただきたい」としたら、それに合わせて船の速度を調整することもしています。「いかに船が動いている時に楽しんでいただけるか」常に考えていることです。

少々お恥ずかしいお話ですが・・。私は「42度」には進路を取りません。少し大回りしても角度を変えて進みます。先輩から引き継いでいる、いわゆる「ジンクス」「げん担ぎ」です。それに、ログブック(記録)にも、なるべく「○○時42分」と記載しないようにしています。○○時43分になるまで、1分待ったりすることもあります(笑)

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『人を大切にすること』

私はおそらく他の船の船長に比べ、船内をウロウロしている時間が長いかもしれません。そして、ダンスタイムの時にはダンス会場にずっと居てしまうんです。

船長ですから、ダンスのお相手をさせていただくことはよくあることですが、「どなたかとだけ」とはあまり良くないのではと考えています。結果として、会場にいらっしゃるご婦人の全員の方と
お相手させていただくことになり、終盤まで居てしまうことになるんです(笑)ダンス会場は、私にとって、お客様との大切なコミュニケーションの場。まさに「社交の場」です。

「料理がおいしかった」「今度はクルーズで○○に行ってみたい」「こういうところが改善出来たらもっと良い」いろいろなご意見を直接聞くことができる、貴重な機会です。

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また、7階のパブリックスペースに行くと、たいていお客様がいらっしゃる。お一人参加の方に声をかけたり、お茶に誘うこともあります。行き交うお客様たちと世間話をしたり。そんな姿に、「船長、なにやってるのかしら」と思われているかもしれませんね(笑)

私がお客様と多く接するようにしているのは、率直なご意見をお聞きするため。お客様が「楽しんでいらっしゃるか」「お困りのことはないか」などお一人お一人のご様子を確認することも、私の大切な仕事だと考えているからなのです。可能な限り、多くの方とコミュニケーションを取るように心がけています。お客様のプライベートな時間も大切にしたいですし、お客様とつかず離れずの距離感を大切にしています。この距離感はとても難しいですが、長い経験から適度な距離感がわかるように
なってきました。

そして、船内スタッフの仕事も観察しています。とくに船内が忙しい時間帯に。スタッフたちが困っていないか、人員配置に問題ないか、足りないものはないかなど、忙しいときほどよく見えてきます。

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そして、スタッフの手が空いてきた頃に、声をかけるようにしています。年齢や立場を越えて、若いスタッフや外国人スタッフと世間話で盛り上がることもありますし、家族の話もすることもあります。その時には、スタッフの「話をよく聞くこと」を特に心がけています。

学生時代から身に染みついている組織の縦社会。船の安全を第一に考えると縦の組織ということも必要ですが、私は信頼関係から成るチームワークも大切にしたいと思います。

「叱る役目は中間管理職。聞く役目は私」と決めています。中間管理職のスタッフには、「船長はいいですよねー」と言われてしまいますが(笑)でも、船長に叱られたら、スタッフはもう身動きが取れませんよね。それがすべてになってしまいますから。スタッフの本音や考えを聞き出すには、「聞き役」が必要なんです。

その3へ続く >>

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